理学療法士をしていた経験が最大限に活かされた出来事がありました.これから書くことは,自分の強みであると自信を持って言えます.そして,この業界で同じことができる人はほとんどいないと思います.
私の「特殊能力です」
先輩の担当のお客様でしたが,30代で脳梗塞になり,後遺症で片麻痺になった方がいました.保険の加入内容は「介護の保障がついた一生涯の保険」(要介護2もしくは同等の状態で使える保険).
発症後半年経過していましたが,隣の席で先輩が「保険金が出なかった」って言うんですよ.杖ついて歩いているし,失語(しゃべりにくい)もあるし,仕事復帰も困難.
その瞬間,え?おかしくない??って思いました.
私の頭の中では,保険金も支払われるはずだし,他の保険の支払いも免除されるはず!です.脳梗塞は程度にもよりますが,およそ半年くらいで,回復がピークになることが多いので,日常生活でできることの限界も分かってくる時期です.
診断書を見せてもらって衝撃でした.僕は専門用語も評価の内容も全てわかるので,二言目には一緒に病院に行きますよ!僕が主治医と話します!でした.正直なところ,内容はめちゃくちゃでした.
病院へ訪問すると, 主治医の一言目は「手短にお願いします」でした.主治医からすると,保険会社の人から診断書の訂正の要望があるなんて思ってもなかったでしょう.僕がお願いしたことは,以下のことです.
①回復の見込みは今後の期待値を含めず,医学的な判断を記載する
②日常生活の動作レベルをはっきりと記載(できることできないことをはっきりと)
③各病名の診断日と現在の後遺症との時系列をカルテと相違なく記載する
正直なところ医学的には回復の見込みが厳しい段階でも,家族や本人の希望を潰さないために,医療従事者側は予後をはっきりと伝えないケースは多々あります.①〜③の項目を丁寧に確認していただくと,診断書は訂正印で真っ赤になりました.
主治医の目つきは変わり帰り際に,「診断書って軽く捉えられるように書くケースがほとんどだと思っていた.保険屋は契約とるだけで,正直面倒な存在だと思っていたけど,なんでそこまでするの?」と言われました.これに対しては,間髪いれず即答でしたよ.「保険はこういうときのために加入してるんですよ?僕らは保険金払うことが一番大切だと思ってます.どこの会社に加入していても関係ないですから,困っている患者さんがいたら呼んでください」と.
「イメージ変わりました.」って笑顔で返答がありました.その約1週間後,お客様には50,000ドル(当時は約600万円)が支払われ,他の契約は支払免除となりました.
両親と生活されている独身の方でした.将来を考えるとこのお金の価値は説明不要と思います.
病気は突然発症します.その瞬間から,病気と経済的不安と戦わないといけません.保険金を受け取れていない方,請求漏れしている方がかなりいるのではないでしょうか?
若くして脳梗塞になったことは本当に不幸なことです.診断書にはそんな不幸を軽減する力がありました.全てのケースで対応できるわけではないと思いますが,1枚の診断書の力を感じた出来事でした.たくさんの医師に伝えたいです.
診察や投薬,手術だけが患者さんを救うのではなく,診断書でも患者さんを救うことができます!
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